「群青リフレクション」酒井まゆ全5巻:顔も心も丸っこい、ひたむき主人公の青春・芸能ラブストーリー!

春田なな先生と双璧をなす「りぼん」の伝統を守るエース格と言えば、やはり酒井まゆ先生でしょう(お二方のサインは我が家の家宝です)。酒井先生といえば、2020年7月号から新連載「ハローイノセント」を連載中ですが、今日は「ハローイノセント」の直近の完結作である「群青リフレクション」を紹介します。(このレビューは主に読んだことがない人向けに書いているため、核心的なネタバレは基本的に避けていますが、最低限・ほのかな程度は含みますのでご容赦ください)

目次

【作品概要とあらすじ】酒井まゆ「群青リフレクション」

連載時期:『りぼん』2017年11月号 – 2019年10月号

キラキラの芸能科ライフスタート!

心晴は私立船越高校の芸能科に通う1年生。
クラスは売れっ子有名人ばっかりで、無名の心晴はちょっと気後れ。でも、「私じゃなきゃダメなお仕事がしてみたい!」そんな決意でドキドキの学校生活がスタート。
主役に抜擢されると将来売れっ子になれるというジンクスのある新入生歓迎会のミニ演劇で謎の闇キャラ・芹沢漣とともに主役をやることになり…!?

歴代酒井ヒロインの中でも、顔も性格も丸っこい!?

コミックス表紙の画像を見てもお分かりのとおり、主人公・柊 心晴(こはる)の顔はかなり丸っこいです。酒井先生史上、最丸で(笑)で可愛いです(前々作も丸かったような……?)。細い描線が持ち味の酒井先生ですが、デフォルメのカットなどコミカルなシーンも取り入れて、メリハリも効いています。心晴は、その名のとおり、心晴れやかで、性格も棘がなく丸っこいのも魅力ですね。浅川梨奈さんの解説が的確です。「芸能界で生き残ってくのって、きっとこういう子!ちょっと天然で、天真爛漫で、お転婆なところもあって……誰に対しても笑顔で、あんまり男の子にこびない感じ!女子にも嫌われないし、イケメンに好かれてても嫌味ない!」。

たしかに、ひたむきな性格は好感がとても好感が持てます。「りぼん」の芸能モノといえば、吉住渉「ハンサムな彼女」小花美穂「こどものおもちゃ」がありますが、萩原未央、倉田紗南とはまた違った人物造形ですね。劇中では、クールで謎めいた実力派の芹沢 漣、売れっ子若手俳優で幼馴染の紺野 景梧、気鋭の映画監督の氷上瑛次らの助力を得て、心晴は幸運と努力でスターダムを登っていきます。時に壁にぶつかりながらも、気持ちに折り合いをつけつつ、前に進んでいく様子が自然な感じで読んでいて応援したくなりますね。

「群青リフレクション」のタイトルに込められた意味

「リフレクション」にはキラキラした青春のイメージと、青春の物語を通して読者が何を見るか、2つのニュアンスが込められているように感じます。その理由は、「群青(ぐんじょう)色」と、「群像」「青春」を掛けたタイトルになります。

「青くて憂鬱で幸福な日々」と1話の最後で示しているように、「青春」とはそうしたものなのでしょう。「refletion」の直訳は「反射」となりますが、「reflect」は他動詞で、~を熟考する、思案するという意味もあり、自動詞の「reflect on~」でじっくり考える、内省する、自分と向かい合うといった熟語もあります。高校上級レベルの英語長文では出てくるので、りぼんっ子は覚えておくように!(すみません、塾講師のバイトをやっていた頃の血が騒ぎました)。

酒井先生の緻密なストーリー作りの3つの魅力

5巻という程よい長さの構成が、ストーリーとしてのまとまりをしっかり形作っています。「群青リフレクション」の緻密なストーリーの魅力は、3つあります。

程々のリアリティ

1つ目は、程良いリアリティ。解説の浅川梨奈さんの帯コメント「リアルとあこがれのバランスが絶妙」が、まさに正鵠を射ています。芸能科という未知の世界はりぼんっ子の実感と全く離れた世界。酒井先生は芸能科への取材を経て、本編での心情描写や出来事の演出などで、うまく等身大の高校生へと近づけることで、読み手に世界と人物を近づけています。「ハンサムな彼女」や「こどものおもちゃ」は私も大好きな作品ですが、こと主人公への共感度や展開の自然さでは「群青リフレクション」に分があると感じます。

SNSの作品への溶け込ませ方

2つ目は、SNSの作品への溶け込ませ方です。芸能人はSNSとの関わりが大きいですが、私達も無関係ではいられない時代です。携帯電話、SNSツールの登場と普及は、大きく少女漫画の描写における登場人物達の距離感にも影響を与えています。言葉をかわし、思い悩むのは、対面だけではなく、スマートフォンの電話・メール・SNSといったコミュニケーションツールにおいても同じです。

酒井先生は、SNSを作品の味付けに巧みに織り込ませています。たとえば、主人公・心晴はイカの気ぐるみのCMくらいしか登場時は実績がないのですが、本筋とは違うところでイカダンス動画のバズりが話のオチになっています。また、本編の展開の一部ではSNSの画面のコメントたちが世間への届き方を示唆しており、作品のストーリー展開のスピードを適度に加速する良い味付けになっています。

登場人物の過去の描き方と伏線の張り方

3つ目は、登場人物の過去の描き方と伏線の張り方です。本誌連載、コミックスで1回、さらにこのレビューを読むにあたりもう1回読み返しましたが、面白い漫画は何度読んでも面白いですね。2回読むと、あの時のセリフ、あの時の表情、あの時のしぐさにはなるほどそんな意味があったのか!と、何度も気付かされます。柊 心晴、芹沢 漣、紺野 景梧の主要人物3人には、三者三様の過去があり、それぞれの考え方や人への向き合い方があります。3人で演じるドラマのセリフがそれぞれの心情と重なり合う物語のクライマックスシーンの素晴らしさは、丁寧な準備と下敷きあってこそなのです。

まとめ

酒井まゆ「群青リフレクション」は芸能界という特殊な舞台を描きつつも、程々のリアリティを保ちながら、SNSの作品への溶け込ませ方、登場人物の過去の描き方と伏線の張り方によって緻密なストーリーを描いています。群像・青春のラブストーリー、あなたも読んでみませんか?

試し読みは→こちら

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